2019年2月15日 6:39 pm

左から 商品企画課 永瀬美奈子さん、販売企画課 管理栄養士 榊原知秋さん、わんぱく子どもの食事研究所所長 佐橋ゆかり

乳幼児の3大アレルゲンである卵・乳・小麦を使用しない給食献立を工夫し、献立に3大アレルゲンを使わない保育園が増えています。
「わんぱく子どもの食事研究所」では、アレルゲンの代替えとなる素材として、栄養価の高い大豆、大豆製品に注目してきました。中でも「大豆粉」は、小麦粉の代替えとして、5年ほど前からレシピ開発を進め、献立に取り入れやすいものだと考えるようになりました。
献立として実現するには、「大豆ミート」も使いやすく、市場に求められるものだと感じています。大豆製品を製造販売するマルコメ株式会社(以下、マルコメ)に訪問し、園での活用法について話を聞きました。

 

 

 

手に入りやすくなった環境 メーカも創意工夫しています。

「わんぱく子どもの食事研究所」では、小麦粉の代用として、5年ほど前から「大豆粉」に注目してきました。当時は販売店が少なく、マルコメの担当者さんから、直接研究所に納入いただいていました。今ではネット通販でも気軽に購入できるようになり、レシピ開発を進められる環境が整っています。

また、2020年には国民の健康障害の予防を目的とする「日本人の食事摂取基準」が改訂されます。その中で注目されている栄養成分は、脂肪酸やたんぱく質。一方、日本動脈硬化学会では、「週に2~3回は大豆を主菜にしましょう」と言っています。

大豆に求められている役割を意識しながら、「小麦粉アレルギーの重篤な子どもも、楽しく給食を食べてほしい」という思いで、小麦粉の代用素材となる大豆粉のレシピ開発を積極的に進めています。

昨年出版したレシピ本「スチコンで作る野菜のおやつ 和給食2」では、おやつの材料として「大豆粉」を米粉と並べて紹介し、商品を写真入りで掲載して、ケーキのレシピに多用しました。レシピ本を購入いただいた読者から、大豆粉に関して、多くの問い合わせがあります。例えば、「納品業者に頼んだら、入らないと言われた」「使ったことがなく、給食に取り入れるまでのハードルが高い」などです。保育園の現場では、「大豆メインの献立は、マーボー豆腐、ポークビーンズくらい。煮豆や凍り豆腐の料理は、園児にとって食べにくさがある」というのが、本音だと思います。
 まだ認知が広がってないと感じる中、研究所では、各地で主催する調理セミナーで、実際に大豆粉を使ってデモンストレーションを行い、参加者に料理を食べてもらっています。たくさんの質問を受け、参加者の大豆粉に対する関心の高さを感じます。

今回は、マルコメ東京本部を訪ね、大豆関連商品の担当者に、大豆粉の栄養価値、園給食での汎用性について聞きました。お肉の代わりとして人気上昇中の「大豆ミート」、砂糖の代わりにもなる自然な甘さの「糀(こうじ)甘酒」についても、利点を教えてもらいました。給食づくりに役立てていただければうれしいです。

 

 

「わんぱく子どもの食事研究所」発

大豆製品の栄養成分
大豆は、肉や魚と同じように高たんぱくで、ビタミン、ミネラル、食物繊維が含まれています。表1のように、食品に含まれる栄養素には違いがあり、それを組み合わせて食べることで栄養バランスが整いますが、多くの栄養素を含む大豆は、子どもたちに必要な栄養素を補ってくれる、栄養密度が高い貴重な食品です(グラフ1)。

大豆製品の機能成分
大豆は、コレステロールフリー。さらにコレステロール値を下げる大豆ペプチドや、コレステロールの吸収を抑えて、代謝促進する大豆サポニンなども含まれ、ダイエットサポート食品としても注目されています。また、丈夫な骨の維持に役立ち、女性ホルモンと似た働きをする大豆イソフラボンも含まれており、どの年代の人にとっても効果があります。

特徴をつかんで活用したい 可能性のある「大豆粉」

大豆商品を囲んで、話が盛り上がります

長らく注目している大豆粉ですが、園で取り入れるには、扱いやすい素材ではないというのが課題です。その特徴を把握すると、活用しやすくなります。マーケティング部の方々に、大豆の商品について聞きました。

Q.大豆粉について教えてください。

現在マルコメは、「味噌」「大豆」「糀」の3つの事業が核になっています。味噌製造業として、1854年の創業以来、味噌を作ってきました。味噌の主原料は大豆と米、塩。発酵食品として健康的なイメージが定着する一方で、どのように作られているのか、どんな栄養効果があるか、ご存知ない方が非常に多かったのです。食シーンの変化や人口減少に伴い、味噌自体の出荷量はなかなか伸びない現状があります。味噌自体を知ってもらい、主原料の大豆や、米糀の魅力も、もっと違う形で広げられないかというところから、「味噌」に加えて、「大豆」「糀」事業が始まりました。
大豆はいろいろな形に加工され、多彩な商品が市場に流通しています。「大豆粉」に関しても、すでに世の中に流通していました。マルコメが製造販売することによって、「味噌の主原料は大豆」ということを再認識していただきたい、そして生活者に健やかな食を提案したいと、「大豆」事業を2015年にスタートさせています。
マルコメは、大豆関連商品を「ダイズラボ」というブランド名で商品化しています。健康志向の高まりで、この1年くらいで手ごたえを感じるようになりました。大豆粉を使ったシリーズは、小麦粉不使用でグルテンフリーとは思えない、口どけなめらかな仕上がりです。ホットケーキミックスのようなイメージで使える、大豆粉をベースにした「糖質50%オフのスイーツ粉」は、糖質とカロリーの管理がしやすく、調理レパートリーが幅広いため、特に人気です。

Q.大豆粉は、具体的にはどのようなものでしょうか?

マルコメでは、大豆粉の販売は2015年8月から。「小麦粉の代替え」となり、「糖質が抑えられる」ことを打ち出してきました。
大豆粉とは、大豆を粉砕したもの。「ダイズラボ」の大豆粉は、大豆をそのまま粉砕し、大豆丸ごとの栄養が摂れます。さらに低温で焙煎処理を行っているため、大豆特有の青臭みが抑えられ、自然な味わいが生きています。
取り扱いの注意点は、開封後は賞味期限に関わらず、袋口のチャックをしっかり閉め、直射日光、高温多湿を避け、なるべく早めに使いきること。冷蔵庫での保管は、結露による固まりやカビの発生に注意してください。

Q.きな粉との違いは何でしょうか?

きな粉は煎った大豆を粉にしたもの。煎っているため、独特の風味があります。大豆粉は低温焙煎したもので、生に近い成分も残っています。そのため、大豆粉は必ず加熱調理をしてから食べてください。
粉に独特の風味が強すぎると、レシピが狭まってしまいます。マルコメの大豆粉は「小麦粉の代替え」が開発のスタートなので、大豆の風味を生かしながら粉末化して、調理に使用しやすく仕上げています。

Q.大豆ミートについて教えてください。

大豆粉と同じように、どうしたら味噌の原料である大豆を食べてもらえるか、汎用性を広げていけるかと、着目したのが「大豆ミート」。販売は、2015年3月からです。
大豆の新しい食べ方の提案として、お肉の代わりに使える「大豆のお肉」と、伝わりやすい表現をしています。大豆の栄養を手軽に摂れて、食物繊維が豊富。通常のお肉と比べて、カロリー、脂質を抑えることができ、ヘルシーに仕上がります。

【大豆ミートができるまで】

別名ベジミート、ソイミートとも呼ばれます。大豆の油分を搾油し、加熱・加圧・乾燥させた食材です。

① 搾油
大豆を機械で搾油します。

② 加熱・加圧
専用の装置で加熱・加圧して、たんぱく質を繊維状にします。

③ 成形
図1のように、実際の食肉加工のように使いやすい形に成形します。

④ 乾燥・殺菌
成形したものを、そのまま高温で乾燥・殺菌し、自然冷却してから梱包します。

Q.今後の展開を教えてください。

「大豆粉」「大豆ミート」ともに大豆の栄養をそのまま召し上がっていただけるような商品に仕上げています。現在はレシピ開発に力を入れ、栄養面などまだまだ知られていない大豆の魅力を紹介しながら、どう使っていいか分からないという方々に向けて、専門家や、レシピサイトを運営する企業さまと協力しながら、分かりやすくおいしいレシピを発信しています。
「大豆粉」のレシピは、スイーツを中心にパンやカレーなどもご紹介しています。小麦粉の代わりとして、商品ラインアップも含め、商品はスーパーマーケットを中心に商品を並べていただいています。
「大豆ミート」は、タレ付き、レシピ付き商品も展開していて、回鍋肉やカレーを手軽にすぐ作ることができます。まずは試しやすい商品から、使い方やおいしさを知ってもらえるきっかけになればと、商品ラインアップも含め、いろいろなトライアルを続けています。

”膨らみが弱い”事を克服して「大豆粉」を給食で取り入れるために

園を訪問すると、みなさん多用されているのが「ホットケーキミックス」です。ドーナツ、パン、アメリカンドッグなど、いろいろなものに使われています。
乳が入っていない大豆粉をベースにしたミックス粉が、手ごろな価格で手に入ったら、園で普及していくことでしょう。マルコメでは、大豆粉の「膨らみが弱い」点を克服するための研究を進め、食感は、糀を加えるなどの工夫をしているそうです。流通が拡大し、価格が安くなることも期待したいです。管理栄養士の榊原さんに、大豆粉の特徴を活かしたレシピを紹介してもらいました。

特徴を活かしたレシピにトライ

グラタンやシチューに使える
「大豆粉で作るホワイトソース」

当社の商品で、大豆粉を使ったカレーがあります。当たり前のようにカレーのとろみをつけるのに小麦粉を使っていますが、大豆粉で作ったところ、特に小麦粉である必要がなかったのです。「ホワイトソース」についても、そん色なく作ることができました。小麦粉や片栗粉に比べたら少し弱いですが、乳製品と合わせて煮詰めたら、とろみがでます。牛乳と大豆粉は相性がよく、牛乳の力が大きく影響していると思います。豆乳と大豆粉も相性がいいため、牛乳を豆乳に代えても問題はありません。基本のホワイトソースの作り方と覚えるとレシピが広がります。今回はシチューのアレンジを紹介します。(榊原さん)

とろみをつけるのは新発想! 栄養密度を上げるのにも役立ちますね

材料(大人2人分)

  • 大豆粉 22.5g
  • バター 15g
  • 牛乳 150g
  • 塩こしょう 適量
  • ナツメグ 適量

※出来上がり量約140g
※4人分以上が作りやすい

  1. 鍋にバターと大豆粉を入れて弱火にかけ、バターをゆっくり溶かしながら炒める。
  2. 全体に混ざって1分ほど炒めたら、火からおろして濡れ布巾を敷いた台に置く。牛乳を少量ずつ加え混ぜ、その都度しっかりとなじませる。
  3. 牛乳を全量加えたら再び火にかける。全体にふつふつと沸いてきたら、中火で絶えず混ぜながら5分ほど煮詰め、ゆるめにとろみがついたら塩こしょう、ナツメグで味をととのえ、火から下ろす。

※②で牛乳を少量ずつしっかりなじませながら加えれば、ダマになることはありません。
※小麦粉で作るホワイトソースより、とろみがつくのに少し時間がかかります。

 

大豆の風味が効いたアレンジレシピ
「大豆粉ホワイトソースで作るシチュー」

粉のざらっと感は、カボチャなど野菜をたくさん入れると気になりませんね!

材料(大人2人分)

 具材

  • 鶏もも肉 1/2枚(150g)
  • 玉ねぎ 80g
  • にんじん 80g
  • ブロッコリー 60g

調味料

  • 大豆粉で作った
    ホワイトソース 140g
  • コンソメスープ 200cc
  • 塩 適量

<下ごしらえ> ブロッコリーは小房に分けてさっと下ゆでする。

  1. 鶏もも肉、にんじんは一口大、玉ねぎはくし型切りにする。
  2. 鍋に①を入れて炒める。鶏もも肉の色が変わって玉ねぎがしんなりしてきたら、コンソメスープを加えて煮込む。
  3. にんじんに火が通ったら、大豆粉で作ったホワイトソースを加えて弱火で煮込む。
  4. 絶えず混ぜながらゆるくとろみがついたら塩で味をととのえ、ブロッコリーを加えて温める。

※②でローリエを加えても風味よく仕上がります。
※とろみがつき過ぎてしまった場合は、牛乳を少量加えましょう。

 

「わんぱく子どもの食事研究所」発

粉の特徴の比較
「わんぱく子どもの食事研究所」の調理セミナーでは、「小麦粉だったものを、米粉、大豆粉にすると、アレルギーリスクを下げます」という話しをします。米粉と大豆粉を組み合わせるのがよいと感じていて、そこに片栗粉を加えるレシピを多く開発しています。
研究所では、小麦粉を使うときと、ほかの粉で代用するときの、栄養価や価格、調理性を比較してみました。価格については、一人分で計算するとそれほど高くはありません。それぞれの粉の特徴を把握すると、活用の幅が広がります。

・甘味          米粉   > 小麦粉 > 大豆粉
・香ばしさ        大豆粉  > 小麦粉 > 米粉
・生地の粘り       小麦粉  > 米粉・大豆粉
・焼いた時のふわふわ感  小麦粉  > 米粉  > 大豆粉
・焼いた時のさくっと感  小麦粉・大豆粉    > 米粉
・吸油率         小麦粉  > 米粉・大豆粉
・価格          大豆粉(800円/Kg)> 米粉(600円/Kg)> 小麦粉(250円/Kg) 

 

保育園のおやつ
「バナナパン」
焼き色が食欲をそそる、生地にバナナが入ったしっとりパンです。

材料(幼児1人分)

    • 大豆粉 8g
    • 米粉 4g
    • 片栗粉 3g
    • べーキングパウダー 0.8g
    • バナナ 20g
    • 豆乳 10g
    • 油 4g
    • 砂糖 2g

【作り方】

    1. バナナを輪切りにしたものを飾り用に1人1枚残す。
    2. 残りのバナナをつぶす。
    3. 豆乳、油、砂糖をよく混ぜた後、②を加えて混ぜる。
    4. 大豆粉、米粉、片栗粉、べーキングパウダーをよく混ぜる。
    5. ③と④を合わせて混ぜる。
    6. 型に流して①をのせて軽く押し170℃のオーブンで18分程度焼く。

*スチコンの場合は、ホットエアーモードで加熱する。
*2/3ホテルパン1枚で24人分調理。

Categorised in:

コメントを残す