米粉は、小麦粉とは異なり、レシピ通りに作っても思ったように出来上がらないことがあるようです。
米粉は自給率100%で安心・安全。小麦粉に比べて格段にアレルギーリスクも低い食材です。保育園で十分に活用できるように米粉の知識を深めましょう。
■米粉の扱いが難しい理由とは?
米粉が小麦粉と比較して失敗しやすい原因は、購入する製品によって「品質」が大きく異なるからです。
小麦は90%が輸入。日本政府が一括して輸入し、それを製粉会社が購入し製粉しています。製粉会社は、上位4社で国内全体の70%シェアを掌握しており、「日清製粉」がトップで、小麦粉の売上高の半数近くを占めています。メーカー数が少ないこともあって、私たちは普段の食生活の中で、小麦粉の品質の違いをあまり感じる機会がありません。
その一方で、米粉の原料となる米は日本全国で作らており、その米を製粉し販売しているメーカーは各地に数えきれないほどあります。米は日本の主食なので品種も豊富。米粉は購入する製 品よって品質に大きな違いがあります。
■品質の違いとは?
米粉は製品によってでんぷんの構成成分が異なり、さらに製粉の方法によって粒子の大きさや細胞損傷率が異なります。
日本米粉協会は、菓子・料理用、パン用、麺用など、用法別に下記のように基準を設けていますが、実際には私たちが選択するための基準として機能していません。
米粉の用途別基準・用途表記
各用途の具体例は「参考」を参照
給食で使うのは、1番に該当するグルテンが添加されていない製品です。ただし同じ目的の米粉でも実際には品質に差があります。米粉に同じ量の水を加えても、まったく違う形状になります。
●サラサラした生地になる米粉 (共立食品)
●もったりした生地になる米粉 (ニップン)
現状の限られた情報で失敗しないためには、レシピ本に記載されているメーカーの米粉を購入することが一番重要です。
研究所から発刊している、保育園給食の専門書「和給食2おやつ編」、また給食管理ソフトわんぱくランチの「サンプル料理」では、ニップンの「米粉」を使用しています。
■研究所でニップンの「米粉」を使う理由
研究所では、市販されている複数の米粉の中から、
- ネットを含めて全国のユーザーが購入できること
- 価格が比較的安く安定していること
を最低条件として、味(嗜好)と使いやすさ(調理)を評価しながら候補を2つに絞りました。
- ニップンの「米粉」
- 共立食品の「米の粉」
上記から、研究所でニップンの「米粉」を選んだ理由は、
- 甘みを感じられる (減糖につながる)
- 噛むときには弾力があるが、口どけがよい (窒息のリスクが少ない)
- 料理の衣として使える
といったことです。
選ばなかった「米の粉」は、小麦粉のようなふんわり感が出せる一方で、甘さを感じにくい、口どけが悪い、水で溶いたときにサラサラで衣にできないという特徴がありました。
研究所では、栄養面、安全性、調理の容易さに配慮してニップンの「米粉」を選んで使っています。
■米粉蒸しパン(卵不使用)をおいしく作るためのポイント
繰り返しになりますが、失敗しないために最も重要なのはレシピ本に記載されたメーカーの米粉を使うことです。
そのうえで、さらにおいしく作るためにはコツを知っておくことも重要です。
コツは、どんな米粉を使う場合も、生地を混ぜたら時間を置かずにカップやバットに入れて素早く加熱することです。
米粉は、吸水スピードの違いで、規定量の水を加えた時に「もったりとした生地になる米粉」と「サラサラな生地になる米粉」があります。
水分を加えてから時間が経つと、
「もったりとした生地の米粉」の場合
→膨らみが悪くなります。
「サラサラの生地の米粉」の場合
→膨らみますが、下の部分に粉が沈み、食べた時にこの部分団子状になりがちです。
いずれにしても時間が経ってしまうとおいしさが損なわれます。材料を均一に混ぜて、素早く加熱に入ることが、おいしい蒸しパン(卵不使用)を作るコツです。
■さいごに
保育園では、米粉のおやつ、料理が喜ばれている園がある一方で、「もちもち食感」に対して多少なりとも抵抗感があったり、批判的な意見があったりして米粉を使うことができない園もあるようです。
以前、東京で開催したアドムの給食セミナーで、同じレシピの蒸しパンを「小麦粉」と「米粉」で作って試食をした時には、みなさん、「甘さ」と「口どけ」の違いに驚いていました。
米粉の「甘さ」は、ごはんで証明されていますが、実際に米粉を舐めても感じられます。
米粉の「口どけの良さ」は、その点に注目して食べるとはっきりわかります。低年齢児の窒息事故の原因食材にロールパンが入っているように、ふわふわの小麦は水分で団子状になる特性があります。
今まで取り入れてない園では、まずはレシピ指定の「米粉」を購入して、試してみてはいかがでしょうか?
子どもにとって、米粉は安全で安心な食べ物です。
万が一の事態に手作りおやつが必要になるときに、貯蔵品の中にある材料でアレルギーフリーのおやつがすぐにできるのも米粉の優れた点です。
研究所でも、保育園での米粉の活用が進むように、レシピ開発を続けていき、みなさんに役立つ情報をお伝えしていきたいと思います。