2022年2月21日 10:00 am

塩は、高血圧などの生活習慣病との関わりが深く、減塩が強く求められています。

その一方で、塩は料理の「おいしさ」に大きな影響をあたえる調味料。塩を上手に使うことで、子どもにとって食べやすい食事を作ることができます。

今回は、味付けの「塩」だけではなく、調理時に効果を発揮する使い方についてまとめます。

 

■塩の効能

塩は、水を引きつける「脱水作用」と保持する「保水作用」の両方を持ち合わせます。

ひとつめの脱水作用について。

脱水作用とは、食品と塩との浸透圧の差によっておこる現象です。野菜を塩もみすると、野菜から水分が抜けてやわらかくなるのはこの作用によるものです。

次にふたつめの保水作用について。

肉や魚に塩をすると、水が出た後で、身に塩が拡散します。この塩によって筋肉を構成するたんぱく質が溶けてプリッとしっとりとした食感に変化します。焼き魚の場合、アミノ酸が魚の表面に移動するので、メイラード反応で香ばしく焼けるといった効果もあります。肉も塩をすることでジューシーに焼き上がります。

 

■脱水作用を調理に活かす

▼苦み・辛味を軽減

食経験の少ない子どもにとって、野菜の持つ、苦みや辛味は受け入れにくいものですよね。そこで、効果を発揮するのが塩の脱水作用です。

例えば、ピーマンは切ったところに、塩を振りかけると浸透圧で水分と一緒に苦み成分が排出されます。

また、たまねぎの辛味も同じで、塩の作用で辛味を軽減することができます。特にフードプロセッサーで細胞を破壊してしまうと、辛味が残りがちですが、塩をふることで辛味が減ります。また、寒くなってから出荷される北海道たまねぎの辛味とりにも効果的です。

子どもの食事研究所では、フードプロセッサーでみじん切りにする際には、35gたまねぎに0.1gの塩をした後で、加熱し、塩は味付けの一部として活かしています。

 

▼臭みをとる

子どもによっては、魚臭さ、肉臭さが気になり、食べられないことがあります。

魚や肉を調理する前に塩をふりかけると、浸透圧で余分な水分と一緒に臭み成分が排出されます。

 

■保水作用を調理に活かす

▼しっとり質感にする

肉や魚は、加熱で身がしまり、固くなったり、パサパサになりがち。咀嚼・嚥下機能が未発達な子どもは、上手に噛めなかったり、噛みだまりができて飲み込めないような場合がありますね。

これは、塩の保水作用で防ぐことができます。保水作用は、実は砂糖にもあり、塩と砂糖を一緒に使うことでさらに効果が高まります。

研究所では、高たんぱく、低価格の鶏むね肉の調理では、砂糖と塩の両方を使っています。下味としてもみ込むことで、しっとりと焼き上げることができます。

  • 鶏むね肉 50g
  • 砂糖 0.3g
  • 塩 0.2g

わんぱくランチのサンプル料理には、これをベースとした、照り焼き、レモン焼き、ふっくら焼きといった料理があります。

 

■その他の塩の効能

▼保存性を高める

食品の水分を塩が抱え込むため、微生物が水分を利用できなくなり、保存を高めます。梅干しや干し魚などに塩が使われています。

 

▼うま味を引き出す

塩を使うと、浸透圧で水分量が減るため、うま味を強く感じることができます。漬物や干し魚がおいしく感じられる理由のひとつです。

 

▼甘味を引き立てる、酸味をやわらげる

寿司ご飯は、塩を入れることで、ツンとした酸味を和らげることができ、スイカなどの甘さは、塩をかけることで甘味を強く感じることができます。相反する味を抑えたり、引き立てることができます。

 

▼変色を防ぐ

酸化酵素の働きを抑えることができます。給食では、りんごを塩水に浸して変色を防いでいます。

 

■さいごに

給食では、塩を下処理の段階で上手に使い、食材そのものをおいしくした上で、味付けを薄味にするのがベストですね。

これからも、おいしい給食をつくるヒントを、皆さんと共有していきたいと思います。

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