2020年6月18日 4:56 pm

こんにちは。子どもの食事研究所 所長の佐橋ゆかりです。

和食では、出汁をベースとして塩味となる「味噌・醤油」、甘味となる「砂糖・みりん」は欠かすことができません。

近年、食塩・糖類と生活習慣病との関わりについての研究が進み、保育園給食では、これらを減らすことが求められています。

指針に合わせて給食を変えていくポイントは、減塩と減糖をセットで考えること。減塩と減糖は、一方で成り立つわけではなく、味のバランスを取りながら、使用量を減らして薄味に傾けていく必要があります。

研究所では、減塩・減糖をすすめる中で、今「みりん」に注目しています。

■糖類と健康の関係

甘味となる砂糖とみりん。(※みりんとは、「みりん風調味料」ではなく「本みりん」)

砂糖の主成分はスクロース(ショ糖)で、ぶどう糖と果糖で構成されています。

一方、みりんはぶどう糖・麦芽糖・オリゴ糖など9種類以上の糖で構成され、さらに18種類以上のアミノ酸が含まれています。

糖類と健康との関連については、砂糖入りの食品の摂取量が増えると、虫歯のリスクが高くなること。また、肥満、2型糖尿病の原因になることが示唆されています。世界保健機構(WHO)は、砂糖の摂取量を、エネルギー総摂取量の10%未満に減らすよう推奨。そして、さらに5%まで減らすと健康効果が増大することを示しています。

https://apps.who.int/iris/bitstream/handle/10665/149782/9789241549028_eng.pdf;jsessionid=0B7CB98498F6BEC18399F08BD1F636D3?sequence=1

対象となるのは、食品や飲料に加工調理で加えられる糖類(ぶどう糖・果糖、いわゆる砂糖等)とはちみつ、シロップ、果汁、濃縮果汁など。生鮮果実、野菜及び乳中に存在する糖は対象外です。

実は、日本は減糖が極端に遅れています。海外では、子どもがよく食べる食品について、砂糖削減のための企業向けガイドラインを作成していたり、また砂糖税を導入している国もあります。

https://www.gov.uk/government/news/guidelines-on-reducing-sugar-in-food-published-for-industry

日本が立ち遅れている理由は、日本人がどれくらいの糖類を摂取しているのか、明らかになっていないからです。現在、研究が進められているので、2025年の食事摂取基準では、食塩相当量のように砂糖の摂取量の目標量が設定されることになるでしょう。

実際に今後、設定される目標量は、

3歳~5歳(男)のエネルギー量が1300Kcal/日の場合、砂糖等の糖類からのエネルギー推奨量は65Kcal/日。

砂糖の摂取量をエネルギー総摂取量の5%にすると、1日に約16gということになります。

食品に置き換えると

  • 砂糖大匙 1と1/2強
  • 甘い清涼飲料水 170ml
  • 100%ジュース 150ml
  • チョコレート 30g

1回で摂取してしまうような量です。

食事摂取基準2020年度版になり、今、保育園現場では減塩に四苦八苦している状況。2025年には減塩に減糖が加わり、さらに栄養管理の難しさが増すことになります。

そこで!!研究所では、減塩・減糖のために甘味調味料である「みりん」に注目して料理の開発をすすめています。

■みりんが減糖に役立つ理由

みりんの原料は、もち米、米麹、アルコール。

もちろん、みりんにもぶどう糖が含まれますが、米麹の酵素が働いて、糖化・熟成される中で、もち米のデンプンやタンパク質が分解されて、各種糖類、アミノ酸、有機酸、香気成分が生成され、特有の風味が作られます。したがって、みりんは、砂糖よりも料理にコクやうま味を与え深みを出します。

また、みりんに含まれるアルコールが、糖やうまみ成分を一緒に浸み込ませるため、素材に味が入りやすいという効果があります。

さらに、アルコール分が揮発する時には、肉や魚などのにおいの成分も一緒に取り去ってくれるという利点もあります。

見た目の効果も見逃せません。

みりんを加えると照り・ツヤが出るので、おいしそうに見えます。また、アルコールと糖の効果で、煮崩れを防いでくれるので、煮物をきれいに仕上げることができます。

薄味にすることで、料理の色が悪くなってしまいがちなところを解消できるのはうれしいですね。

研究所には、度々「みりんはアルコール成分が含まれますが、小さい子どもが食べても大丈夫?」という質問をいただきます。

また、「離乳期でも大丈夫?」と聞かれることもあります。

成分的には、アルコールは加熱することで、揮発するので、離乳期のお子さんでも問題はありません。ただし、離乳期は、味付けをしないで、素材の味で食べるのがベストなので、みりんを使う機会はないと思います。

 

■砂糖とみりんの使い方について

みりんの使い方については、先週末、京料理の名店、「木乃婦」を訪れ、主人の高橋さんにお話をお伺いしました。高橋さんはNHKの今日の料理の講師としても活躍されている料理人です。

砂糖と同じ甘味をつけようと思った時に、みりんの必要量は3倍。

そして、味付けの際は「塩分となる『しょうゆ』と同量までは『みりん』を使うことができ、それ以上に甘くしたい時には、砂糖を使うとよい。」と教えていただきました。

また、「みりんは、コクがあるので、使い過ぎるとクドクなることもある。料理によって調味料の割合をかえて調整する必要がある。」とのことでした。

ちなみに使用するみりんは一般的な「タカラ本みりん」で充分おいしくできることも教えて頂きました。

■研究所での減塩・減糖の実践例

以前にもメルマガでお伝えしましたが、塩分と糖類は、同時に使うと抑制しあいます。一般的な「甘辛い味付け」では、糖類もしょうゆもたくさん使います。

この抑制効果を考慮すると、糖類を減らせば、しょうゆも減らせることになります。ポイントは、糖類としょうゆを同じ割合で減らすのではなく、糖類を減らす割合を多くすること。そうすることで、塩分が際立ち、思ったより薄く感じず、おいしく食べることができます。

減らし方の例としては、

  • しょうゆ2g → 1.5g (約2割強減)
  • 砂糖1g →0.5g (5割減)

こうすることで、塩分(しょうゆ)を減らしたとは思えないような味になります。

さらに、砂糖をみりんに変えれば、浸み込みやすく、味に深みがでます。

具体的には、

  • しょうゆ 1.5g
  • 砂糖0.5g → みりん1.5g

覚えておくべきことは、「みりんは、砂糖の3分の1の甘さ」ということ。これを知っていると、砂糖とみりんの両方を使うこともできますね。

自園の給食でいろいろ試してみていただくと良いと思います。

研究所では、もちろん、すべての砂糖をみりんに置き換えているわけではありません。

肉を使った料理では、砂糖の保水性が肉のやわらかさを保つこともあります。肉を加熱すると、肉の水分が外に出てしまいますが、そこに砂糖があると、肉のタンパク質と水分を結び付け、保水し、肉が固くなるのを防ぎます。

料理ごとに調味割合を変えることが大切。日本ならではの調味料「みりん」は、和食をおいしく、美しく仕上げてくれることを知っていると、調整力アップにつながります。

■さいごに

「いい塩梅」という言葉があります。「微調整については管理者や責任者はとやかくいわず現場にお任せ。やっておいてくれ。」という場面で使われます。

まさに塩加減やその他調味料の加減は伝統的に調理員に任されてきたわけですが、情報がきちんと提供されていないと、どんどん塩分や糖分が増加してしまいます。

この点でも、栄養士の課題として「塩と調味料の働かせ方を考えた調理法」に関する知識を身に付ける必要があると思います。

研究所では、これからも、子どもたちの将来の健康のために、食材の知識を深め、給食のレシピ研究に活かしていきたいと思っています。

[まとめ]

  • 減塩と減糖はセットで行うと効果的
  • みりんの甘味は砂糖の3分の1
  • みりんの利点
    コクやうま味がアップ
    糖とうま味が浸み込みやすい
    アルコールの揮発と一緒に食材のにおいを消し去る
    煮崩れを防ぐ
    照り・ツヤがでる
  • 料理ごとに、調味割合を検討しながら、減塩・減糖をすすめることが大切。

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