2020年5月11日 8:11 pm

こんにちは。子どもの食事研究所 所長の佐橋ゆかりです。

給食管理では「適時・適温」が重要視されています。

今回は、給食を子どもたちに美味しく食べてもらうため、「温度」に注目してみたいと思います。

■おいしさに関わる温度

おいしさに関わる温度は2種類あります。

  • 食べる場所の温度
  • 料理自体の温度

▼まずは、ひとつめの食べる場所の温度について

人間の感覚の感度が鋭いのは、22度そこから離れると多かれ少なかれ感度が下がり、具体的には25度以上、15度以下になると、人は十分に味わうことができなくなると言われています。

ただ、この感度には湿度も影響しており、湿度が50%以下なら26度でも大丈夫とのこと。食べ物のおいしさには「温度」だけではなく「湿度」も大きく関わっています。

一般的に、食べ物がおいしいのは「秋」と言われています。この季節は、人の感覚が鋭くなる温度と湿度なので、食べ物をおいしく感じることができます。これが「食欲の秋」と言われる理由のひとつですね。

さらに、子どもの場合は、食べる場所の温度・湿度だけでなく、子どもの自身の活動にも多大な影響を受けます。人の体温は均衡を保っていますが、体を動かしたたり、騒いだりすれば、暑い中にいるのと同じ状況が生まれ、味わうための感度が下がります。

保育園では真夏は、午前中に水浴びをして体を少し冷やした後で、食事をするなどの工夫もされていますね。

子どもが、おいしく味わうためには、保育室(又は食堂)の温度・湿度を適切にすることと共に、子どもが食事を味わうことができる態勢になるよう、落ち着いて食事の準備をする時間、食事を待つ時間を持ち、遊びから食事に切り替え、穏やかな雰囲気の中で食事をすることができる環境を整えることも必要です。

給食では、いつもと同じ味付けでも、
・保育士さんから「薄い・濃い」と言われたり
・思ったよりも残菜がでてしまう
ということがありますよね。

給食の評価については、料理だけでなく、食環境と合わせて評価する必要があります。

▼ふたつめは、料理(食材)の温度について

献立作成、調理を行う人、子どもの食事を支援する人は、料理のそのものの温度によっても、味の感じ方に違いが生じていることを知っておく必要があります。

  • 酸味は温かい方が強く感じる
  • 塩味は温かい方が強く感じる
  • 甘味は温かい方が強く感じる
  • 苦味は冷めた方が強く感じる

減塩・減糖が求められる中で、「温度」という要素は重要です。

料理の味は、苦味以外は、出来て・アツアツの時より、冷めた時の方が薄く感じます。なので、常温で食べる「お弁当」は、塩味・甘味を強くしないとおいしく食べることができません。

適時・適温、温かい状態で提供することは、減塩・減糖につながります。給食づくりでは、実際に食べる温度を想定して、味付けをすることを心がける必要があります。

また、どんな温度で提供すべきかを考えることも大切です。例えば、蒸しパン。冷たくなってしまった蒸しパンより、温かい蒸しパンの方が甘く感じるので、砂糖の量を減らすことができます。

そして、子どもの嫌がる苦味がある野菜については、温かい料理として提供するのもひとつの方法です。和え物よりも煮浸、煮物に加えた方が食べやすいということがあります。

おいしさにとって、温度は欠かせない要素です。

■さいごに

給食管理では、

  • 衛生管理
  • おいしさ

の両面から、温度を管理することが厳しく求められています。
おいしさの面では、病院給食で適温配膳車(カート)が使われていなかった頃は、「病院給食=まずい(薄味)」と言われていました。その当時から栄養士として働いていた私は、カートの導入時、同じ食事が温かくなっただけで、みんなが「味がある!おいしい」と言う事に衝撃を憶えました。

子どもたちにとっては、熱いものはケガのリスクがあり、「熱いより、冷めている方がよい」と思ってしまいがちですが、やっぱり大切なのは適温。「提供温度」にこだわって、減塩・減糖につなげていきたいと思います。

 

[まとめ]

・温度はおいしさに影響する

・人間の感覚の感度が鋭いのは22度。この温度がおいしく食べるのには最適。ただし、湿度が低ければ、多少温度が高くても味わうことができる。

・子どもの場合は、活動の影響で、高温・多湿下にいるのとの同じ状況が生まれる。おいしく食べるためには、温度・湿度と共に、子どもたちが落ち着いた環境で食べることが大切。

・甘味・塩味は温かい方が強く感じる

・適切な温度で提供することは減塩・減糖につながる

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