暑かった夏が終わってやっと涼しくなったなあ、と思ったら、朝晩すっかり冷え込むようになってきました。季節があるのは南北に長い日本のおかげ。この世界でも珍しい季節の移ろいに、日本人は心を動かされるものですよね。 季節の移ろいを最も感じる時は食事といってもいいでしょう。季節の到来を愛で、過行く季節を惜しむ。四季折々の食材を使い、さらに様々な工夫を凝らして季節感をよりいっそう引き立たたせる中で、季節の変化を大切にする心が育まれてきました。それが日本の食文化「おもてなしの心」として継承されています。 今回は、保育園の実践例から季節の到来を表現する給食づくりについて考えてみます。
■四季折々の食材日本の料亭では、単に四季折々の食材を使うだけではありません。旬の時期を「はしり」「盛り」「名残」と3つに分けて、その繊細な味まで楽しむそうです。 一見、これは日常食では関係なさそうです。でも私たちの給食でも十分に生かすことができます。 ある園では、園庭でナスを栽培し、日ごろからナスに注目させて子どもと一緒に季節感を楽しんいるそうです。 ナスのはしりは6月。保育園では、6月にナスを収穫することで「夏の到来」を感じます。この時期のナスは水分が多くやわらかでアクが少ないのが特徴。子どもたちは、生のフルーティーな味わいに感激してくれます! その後、日差しが強くなることでナスの皮が厚くなり、味わいが変わります。給食では、野菜の変化に合わせて調理します。子どもたちと職員は、季節の移り変わりによる食事の変化に注目しながら、食事を楽しんでいます。 旬の食材を取り入れるだけでなく、さらに一歩進んで季節に合わせた「食の変化」を取り入れた調理や食事提供や環境づくりを行うことによって、食べる体験を食育につなげる効果が期待できます。 |
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■食材への細工料理に季節感を持たせるために「飾り切り(型抜き)」をするのも和食の特徴です。 保育園では、季節に合わせた細工だけでなく、年中行事に合わせて七夕の時に星形にするなど、季節や行事に合わせた演出をしています。 |
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■料理の衣装としての飾り器は料理の衣装ともいわれます。和食では器が季節感を引き立たせる上で重要な役割を果たします。でも残念ながら給食はいつも同じお皿。なかなか料亭のようにはいきません。 ある保育園では、子どもたちが園庭やお散歩で拾い集めた葉を洗って、料理に添えて、食事を楽しんでいるそうです。いわば、「かいしき」を取り入れて給食を提供しているわけです。 「かいしき」とは、料理の下に敷いたり、添えたりする季節の植物の葉や花のこと。「かいしき」は料理に彩を与え、季節感を美しく演出します。海外では、食べられないものを盛り付けることは珍しいようですが、和食では「紅葉」などをさりげなく添えて、季節感を楽しみます。 |
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■季節感を演出する食環境づくり
さらに、季節の演出は食事の空間にまで及びます。
ある保育園では、月に1回「和食の日」を決めて、その季節の草花を飾って食事を楽しんでいるそうです。和食のおもてなしの心が料理や器だけでなく、食事の空間全体まで及び、それが食事の心地よさにつながる体験を大切にしているのだと思います。 |
<まとめ>今回は、給食で季節感を演出する実践例をお伝えしました。
季節感を演出することは、子どもが食に注目する動機つけとなり、食を楽しむことの心地よさを体験することにつながります。私はそれがおもてなしの心だと思います。給食室から「おもてなしの心」を発信していくことができたらいいですね。 |