2019年8月23日 3:50 pm
「食物アレルギー対応と食育について」 開催日:2019年08月23日 講師 今井孝成先生 プロフィール 東京慈恵会医科大学医学部を卒業後、昭和大学小児科学講座に入局。独立行政法人国立病院機構相模原病院小児科にて小児科全般の診療ならびに、小児のアレルギー疾患について広く診療に携わる。同病院小児科医長を経て、2012年より現職。8年ぶりの改訂となる厚生労働省の「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」見直し検討委員会のメンバー 乳幼児施設に求められる食物アレルギー対応について 毎年夏に実施するアドム主催の給食セミナー。今年は8月23日、「保育所における食物アレルギー対応」をテーマに、2部構成で行いました。 第1部講師は、アレルギー疾患研究の最前線で活躍されている、昭和大学の今井孝成先生。第2部講師は、「卵・乳・小麦を使わない“なかよし給食”」を実施し、全国から視察が相次ぐおおわだ保育園(大阪府門真市)の馬場耕一郎先生です。 今回は、第1部セミナーの内容を詳しく紹介。8年ぶりに改訂された、厚生労働省「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」見直し検討委員会のメンバーである今井先生に、食物アレルギー対応の基本方針から方法論、誤食事故の実態まで、幅広くお話しいただきました。改めて、乳幼児施設における食物アレルギーの課題の大きさを感じるとともに、「安全性を最優先に」という今井先生の言葉は、参加者の胸に刻まれ、自園の課題が見つかったのではないでしょうか。 第2部の「卵・乳・小麦を使わない“なかよし給食”をベースとした食育実践について」は、「佐橋ゆかりのユーザー探訪記」(11月発送予定)でお伝えします。 子どもたちの楽しい園生活のために今まで以上にしっかり対応すべきアレルギー対応 9年ぶりの2017年に改定、2018年4月から適用された「保育所保育指針」では、アレルギーに関するさまざまな改定がありました。食物アレルギー対応に関して、厚生労働省は、6つの大きなテーマの中に、食育とセットで踏み込んでいます。 国、厚生労働省、文部科学省は、アレルギー対応に関して、保育所や学校は今まで以上にしっかり対応すべしという方針を出しています。もっと大きな国という観点で考えたとき、「アレルギー疾患対策基本法」という法律が施行されています。その中では、保育所、学校でのアレルギー疾患対策をしっかりやりましょうということが示されています。 今までみなさんは、努力義務的なイメージで、保育所等における食物アレルギー対策をされていたかもしれませんが、法の管理のもとでアレルギー対応を進めるべきであるという状況があります。そういった背景がある中で、「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」が2019年、8年ぶりに改訂されました。 「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」改訂のポイント 1)医療の専門家ではない保育士等のアレルギー対応に関する理解の促進 2)アレルギー疾患対策に関する保育所の組織的対応と関係機関との連携強化 ・「保育所における各職員の役割の明確化」「保育所と関係機関との連携に関わる項目」の新設 ・「生活管理指導表」の位置づけの明確化、関係機関との情報共有等、記載内容の改善 3)保育現場の状況、最新の知見、関係法令等を踏まえた取り組みの充実 ・保育の現場における食物アレルギー対応(事故対応を含む)の有用性を踏まえた構成や記載内容の改善・充実 ・「緊急時の対応(「エピペン」の使用)」「記録の重要性(事故防止の取り組み)」「災害への備え」「食育活動」等に係る記載の充実 ・生活管理指導表における個別疾患ごとの「病型・治療」や「保育所での生活上の留意点」に関する記載の改善 改訂「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」生活管理指導表の対応が必須です 「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」は、いくつかの改訂のポイントがあります。中でも、「保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表」(図1)の対応が必須になりました。学校は2014年から同じような形の表を、運用必須としています。 厚生労働省は今回の指針の改訂により、保育所におけるアレルギー対応全般は生活管理指導表に基づいて対応すべしという方針を出しました。生活管理指導表を使っている保育所は、全国調査では2割程度. 運用していない園は、「来年度から、生活管理指導表に基づいた対応をする必要がある」と、園長先生、保育所長の先生にお伝えください。 図1 3歳までは3/4以上が「鶏卵・牛乳・小麦」食物アレルギーの有病率は右肩上がり 今なぜ、アレルギー対応、保育所においては食物アレルギー対応が推進されるのか。 まず、患者が増えているからです(図2)。都内で3歳児を持つ親御さんに「お子さんはアレルギーですか」と聞いている調査で、年度ごとの比較ができます。 自分の子どもが食物アレルギーだと思っている親御さんは、右肩上がりでどんどん増えてきている状況があります。実際にはこんなにいませんが、保育所世代の親御さんたちは、少なくない割合で「自分の子どもが食物アレルギーだ」と思う割合が増えてきているという実態があります。 図2 (図3)は、左のオレンジが厚生労働省、右のグリーンが東京都の調査で、これも親御さんに「お子さんはアレルギーですか」と聞き、数値が高めに出ています。保育所において食物アレルギーの対応を求めている割合です。 図3 食物アレルギー患者は…①ゼロ歳、1歳がピークである。②年齢を経るに従って減っている。 食物アレルギー患者が減っていくのはなぜか。赤ちゃん、1~3歳の食物アレルギーは、鶏卵・牛乳・小麦です。これで3/4以上を占めます。プラス大豆もそうですが、実に3歳までに半分が、ほっておいても治ります。小学校に上がる前に、7~8割治ってしまう。患者さんたちが治って、食物アレルギーをどんどん卒業していくから、有病率の割合も下がっていくのです。 小学校以降では、鶏卵・牛乳・小麦などはもう治らなくなってきます。それ以外のそば、ピーナッツなどは基本的に治らなくて、治っても10%です。有病率は下がっていきません 食物アレルギーは死ぬ可能性のある疾病管理を任されている意識を強く持って 「学校生活における健康管理に関する調査」(図4)です。アナフィラキシーは、アレルギーが原因で命に関わる病態に陥っている患者さんだと思ってください。その患者さんが5万人いるという結果です。食物アレルギーは命を落としかねません。 図4 「エピペン」はご存じでしょうか。命を落としかねないアナフィラキシー症状に陥ったお子さんたちを救うお薬。自己注射薬という自分で注射するお薬です。昨年度は、東京都教育委員会[教育庁]管轄で、エピペンは実に5,000本預かっています。とすると、全国で50,000本預かっていると推察されるわけです。 もう一つ、重要で死んでしまうかもしれないのです。有名な事故としては、2012年12月に、東京都調布市で、小学校5年生の女の子が亡くなりました。みなさんが管理している保育園は、登園してきたお子さんたちを生きて帰さないといけない。食物アレルギーは下手をすると死ぬ可能性のある疾病であり、それらの管理を任されているのだという意識を、強く、強く持つ必要があります。 保護者の誤解が多い食物アレルギー正しい診断を受けてもらい、正しい情報を提供しましょう 「食物アレルギーに詳しくなって適切な対応をしていく」ことも大事ですが、一番大事なのは、「患者さん方に正しい診断をちゃんと受けていただく」ことです。冒頭で、親御さんたちが誤解していると話しましたけど、私の感覚的には、半分の食物アレルギー患者さんは偽物です。みなさんは無駄な対応をさせられていたりするのです。 完全除去ではなく、必要最小限の除去が必要20年間で大きく対応が変わりました 昔、食物アレルギーは、血液検査で診断できると思われていました。陽性だったら完全除去。しかし今は「食物経口負荷試験」で診断し、必要最小限の除去を実践いただく必要があります。20年間の歴史を、1枚にまとめたものがあります(図5)。 図5 【食べられる~青文字解説】 ・鶏卵:鶏肉、魚卵、卵殻カルシウムは食べられることが分かっています。 ・牛乳:牛肉、乳酸カルシウム、乳化剤、乳酸菌などは全く関係ありません。 ・小麦:大麦、麦茶などは除去不要。醤油も醸造過程で小麦が分解されるため、重症者でも使えます。 ・大豆:大豆油はたんぱく質を含まないため除去不要です。 【食べられない~赤文字解説】 ・牛乳:乳酸菌飲料は飲めません。加熱しても基本的には食べやすくなりません。 ・鶏卵:加熱をすると一部のたんぱく質が壊れるため、加熱卵なら食べられるケースがあります。 あらゆる症状が出る「食物アレルギー症状」組織的に、安全最優先で対応しましょう 食物アレルギー症状は皮膚症状が実に7割を占めます。唇が腫れた、咳が出たなども含め多岐にわたります。 図6 死にかけた状況「ショック症状」は7%非常にリスクの高い疾病です 「ショック症状7%」は端的にいうと、死にかけた状況です。食物アレルギーはひとたび事故が起きると、大変なことになる可能性が高い。ベテランの経験則で「起きたことがないから大丈夫」と過信せず、高いリスクがあることを強く意識する必要があります。 図7 アナフィラキシーの定義を確認小児は圧倒的に食物が原因、ショックに陥り死亡ケースも アナフィラキシーは全身性の症状がいっぺんにやってきます。血圧低下、意識障害を伴うアナフィラキシーショックに陥って、死亡してしまうケースがあるのです。健康小児の300~500人に1人、アナフィラキシーの既往があります。 【基礎工事・基本方針】 基礎工事:管理職が意識を持ち、適切な人員配置と物資の設備をすること。 基本方針:アレルギーがあっても変わらぬ楽しい給食提供。しかし何より「安全最優先」であること。 図8 保育所における食物アレルギー対応の基本原則 ・全職員における職員の中で組織的に対応しましょう ・医師の指示に基づき、保護者と連携して、適切に対応しましょう ・地域の専門的な支援、関係機関との連携のもと、対応の充実を図りましょう ・食物アレルギーにおいては安全・安心の確保を優先しましょう 安全性が確保されているか再点検をしましょう! 保護者の希望や栄養価計算よりも、まず安全性を確保してください。事故のほとんどは「うっかりミス」です。指差し、声出し確認を面倒くさがらず、恥ずかしがらずに実施してください。 図10 具体的な3つの対策 ① 厚生労働省の生活管理指導票の運用:情報の整理と単純化。 ② 対象者を減らす:正しい診断に基づキ、不必要な除去をやめる。重症児には弁当対応をお願いする。 ③ システムの単純化:複雑な段階的対応を避け、完全除去か提供かの二者択一にする。 図11 図12 図13 図14 セミナー会場の様子 品川区立総合区民会館「きゅりあん」小ホールで行ったセミナーは、320席がすべて埋まり、立見がでる盛況ぶりでした。 アレルギー対応給食をどのように実践しているのか、2園の取り組みをポスターで展示紹介しました。 「最新情報を知ることができ、すぐに役立てたいです」 (中野まり江さん) 「とても勉強になりました。園での活動に活かしたい」 (渡辺優さん) 「食育活動はイベント的になってしまうので、日常的に取り組めるアイデアを得られ、参考になりました」 (小林萌絵さんと岩村友佳さん) © 株式会社アドム セミナーレポート
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