保育園のアレルギー対応で活用されている「生活管理指導表」が、2022年の4月から保険適応されることになりました。
今まで保険適応外だった「生活管理指導表」は、医療機関によって無料だったり、5000円だったりとバラツキがありましたが、今後は、窓口負担が原則2~3割となり、自治体によっては、子どもの医療費助成の対象となります。
■2019年に義務化された「生活管理指導表」
生活管理指導表は、2019年に改訂された「保育所におけるアレルギー対応ガイドライン」において、保育園での活用が義務化されています。
ただ、「生活管理指導表」の作成は保険適応外であったため、医師に記入してもらうとお金がかかっていました。そこで、保育園では保護者負担を考慮し、保護者が医師の診断内容を聞き取って、自ら記載するような「除去依頼書」といった、独自の書式を使っているケースが実際に多くあります。
5187施設から回答を得ている「アレルギー疾患に関する施設調査」では、生活管理指導表(厚生労働省作成(1)・文部科学省作成(2))を活用している施設が47.1%、市町村が作成した様式(3)が16.4%、施設で作成した様式(4)が19.3%となっています。そして、(1)~(4)の様式に対して、医師ではなく保護者が自ら記入したものが39.5%。つまり、本来、医師が記載すべき書類を、保護者が記載しているケースが多くあったということです。
アレルギー疾患に関する施設調査(令和元年度)東京都健康安全研究センター
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/allergy/pdf/2020shisetu_1.pdf
今後は、生活管理指導表が診療行為として明確に位置づけられるため、どの施設でも、保育園で特別な配慮が必要な場合に保護者に配布し、医師が診断の上で記入することになります。
■生活管理指導表の活用について
保険適応になるということは、生活管理指導表が、子どもの健康を守る上で、極めて重要な役割を果たすということが公式に認定されたということ。独自の様式(除去申請書など)を使っている施設は、様式の切り替えを検討することになるでしょう。そして、今後は医師の記載した書類を基に、アレルギー対応をすることになります。
その際に注意しなくてはいけないのが、「医師の記入した生活管理指導表を厳守しないといけない!」と思わないことです。
昭和大学の今井先生は、生活管理指導表を見て「正しい診断なのか?」と疑うことも大切だと言います。
特に「食物負荷試験」を実施しているかどうかは重要です。
食物負荷試験を行わずに「IgE抗体等検査結果陽性」「未摂取」だけで、除去食物に〇が多くついている場合や調味料や油にも〇がついている場合はよく確認する必要があります。場合によっては食物負荷試験を実施できる病院で生活管理指導表を作成してもらうことが必要になります。
また、給食対応に詳しくない医師の場合、牛乳○○mlは飲むことができる。といったことが生活管理指導表に書かれることがあるかもしれません。しかし保育園では、アレルギー対応ガイドラインに従い「完全除去」としなくてはなりません。
生活管理指導表は、現在の病状、治療方針、保育所で配慮すべき点が、医師から伝えられているものとして、保育園では園の状況、子どもの発達に合わせた「安全を最優先にした対応」をとる必要があります。
■家庭支援でも生活管理指導表は重要
その一方で、アレルギー治療においては、食物負荷試験を実施しながらの「必要最小限の除去」も重要です。これは、子どもの健康、保護者・保育園の負担軽減に直結します。
保育園のアレルギー対応は、食物アレルギーが3歳までに半数、小学校に上がる前には7割が良くなります。保育園では「完全除去」で安全な給食を提供することとともに「食べられるようになる」ことを目指した家庭への支援が必要です。
この点においても生活管理指導表は大きな役割を果たすことになります。
保育園では、公的保険適応になる生活管理指導表の活用をさらにすすめ、子どもたちの健康を守り、安全で楽しく食べることができる環境を整えることができたらよいと思います。