2021年8月17日 3:10 pm

保育園での離乳食対応では、アレルギーの初発の事故を防ぐために、「保育園において、初めて食べることを避ける」ことになっています。

ということは?

家庭で離乳食をスタートしてもらわないと、保育園で離乳食が提供できないわけです。

保育園では、「何故、この生後5~6か月頃に離乳食を始める必要があるのか」を正しく理解して、保護者に伝え、家庭と連携して離乳食を進める必要があります。

<生後5~6か月頃に離乳食を開始する理由>

子どもの離乳食をたべる準備が整う
エネルギー・栄養素を補完する必要性がではじめる
アレルギーの観点から最適な時期

■子どもの離乳食を食べる準備が整う

子どもは、5~6か月頃になると、消化機能が発達し、母乳やミルク等の乳汁以外に含まれるでんぷん、たんぱく質、脂質を消化できるようになります。

また、哺乳反射が減少し、舌で食べ物を押し出すことなく半固形食が受け入れられるようになります。哺乳反射とは、生まれた時から備え持つ不随意運動で、大脳の発達とともに減少し、生後5~7か月で消失します。

ガイドラインでは、離乳食開始の目安として

首がすわりしっかりと寝返りができる
5秒以上座れる
スプーン等を口に入れても舌で押し出すことが少なくなる
食べ物に興味をしめす
などを挙げています。

保育園では、身体機能の発達、「食べたがっているサイン」に注目し、子どもの成長を保護者と共有し、喜び合いながら、家庭に対して、適切な時期に離乳食を開始することを促すことが大切です。

■エネルギー・栄養素を補完する必要性

母乳育児の場合は、母乳中の鉄含有量がすくないため、生後6か月の時点でヘモグロビン濃度が低く、鉄欠乏を生じやすいことがわかっています。また乳児では、ビタミンDの不足による「くる病」の危険性もあります。ビタミンDは、食事だけでなく日光にあたる時間も関係しますが、食事からの摂取も重要です。

そして、エネルギーについては、生後5か月を過ぎると、グラフ1のように、乳児に必要なエネルギー量(食事摂取基準値)を、乳汁から摂取するエネルギー量だけで賄うことができなくなります。

ここで用いている乳汁量は、食事摂取基準の算出に使われた値です。もちろん個人の哺乳量を示すものではありませんが、保育園で離乳食を計画する際の参考値となります。

乳児は、月齢が進むにつれて、哺乳量が減り、エネルギーが不足します。このエネルギーギャップを埋めるのが「離乳食」。不足しはじめる5~6か月頃から離乳食が必要になります。

 

グラフ1 年齢ごとに必要なエネルギー量とミルクからの摂取量

育児用ミルク0.1/Lは66.82 kcal(粉ミルク13gとして)※1 廣瀬潤子,遠藤美佳,柴田克己,他. 日本人母乳栄養児(0~5か月)の哺乳量.日本母乳哺育学会雑誌2008;2:23-8

※2 鈴木久美子,佐々木晶子,新澤佳代,他. 離乳前乳児の哺乳量に関する研究.栄養学雑誌2004;62:369-72

※3 米山京子.母乳栄養児の発育と母乳からの栄養素摂取量.小児保健研究1998;57:49-57

※4 米山京子,後藤いずみ,永田久紀. 母乳の栄養成分の授乳月数に伴う変動.日本公衆衛生雑誌1995;42:472-81

 

子どもは、生後1年で体重が3倍になることをみれば、栄養補給の重要性は誰もがわかることです。哺乳で不足するエネルギー・栄養素の補完の意義については、グラフ化するなどして、わかりやすく保護者に示すことができたら良いと思います。

■アレルギーの観点から最適な開始時期

アレルギーの発症の観点からみても、離乳食開始は5~6か月頃の開始が最適です。アレルギーを心配して離乳食を遅らせることに、予防の効果がなく、反対に特定の食物の摂取開始時期の遅れが発症リスクを高めることがわかっています。

2016年、日本でアトピー性皮膚炎のある乳児を対象に、離乳早期からの鶏卵摂取が1歳児時点の鶏卵アレルギー発症を予防する効果が示されました。(PETIT研究)

その一方で、落花生や鶏卵以外の食材においては、早期摂取による発症予防効果を得ることはできていません。

そのため、早期離乳食の開始が発症予防に影響を与えるということではなく、予防のために遅らせることに意味はなく、反対に遅らせることで特定の食物に対する発症リスクを高めることを知っておくことが大切です。

現時点でわかっているアレルギー発症リスクに影響する因子は、遺伝要素、皮膚バリア機能、秋冬生まれ、特定の食物摂取の開始時期の遅れです。

離乳食を進めるにあたり、食物アレルギーが疑われる症状がみられた場合は、必ず医師の診断に基づいて進める必要があるため、受診をすすめ、保育園では生活管理指導票の基づいた対応をすることが大切です。

■さいごに

離乳食をスムーズに進めるためには、家庭との連携が欠かせません。昔は離乳食開始時、アレルギーリスクを考慮しておらず、保育園から離乳食をスタートしていました。その時代は、保育園の離乳食が家庭のモデルになっていましたが、今はそれができません。

離乳食は、「保育園で初めて食べることを避ける」ため、家庭からスタートする必要があるため、保護者の知識やスキルが、離乳食のスタートに大きな影響を与えてしまいます。

今は、昔とは違ったアプローチで、保護者に離乳食の必要性を伝え、保育園で培ってきた実践につながる具体的な方法を示すことが必要です。それが、離乳食の適切な時期のスタート、スムーズな進行につながると思います。

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