2021年12月27日 12:32 pm

 

スチームコンベクションオーブン(以下スチコン)は、とっても便利な加熱機器。

 

自分が新米栄養士だったころに「スチコン」があったら苦労しなかったのに!と思うのは、私だけではないと思います。

 

魚がパサパサになってしまったり・・・。煮物が煮崩れてしまったり・・・。回転窯の蓋を開けた時に、200人分の「肉じゃが」の芋が、全て溶けている光景は悲惨!「食べれば一緒だよ。」と言ってくれた先輩の顔がひきつっていたのを忘れることができません。

 

子どもの食事研究所で、スチコンレシピの研究を始めたのは2014年。2017年~2020年にかけて、3冊のスチコンの専門書「和給食1~3」を出版し、その後も毎日スチコンを稼働させながら、より安全においしい給食を目指して調理技術の研究に励んでいます。

 

  

 

今回は、改めてスチコンのメリットとコツをまとめます。既にスチコンを導入済の方は、「自園給食のアピールポイント」として再認識していただき、未だ導入していない方は、今後の調理環境の整備に向けて参考にしていただければと思います。

 

■スチコンの3つのメリット

  1. おいしい
  2. 栄養を逃がさない
  3. 調理しやすい

 

1つ目の「おいしさ」がスチコンの最大のメリットです。子どもたちに食事を楽しんでもらうために、おいしさは欠かすことができませんね。

では、スチコンがおいしいのは何故でしょうか?

 

その理由は、スチコンが、水蒸気と熱による加熱で、食材に素早く熱を伝えるからです。サウナを思い浮かべてください。乾式のサウナは100℃でも入ることができますが、スチームサウナは60℃以上の温度になると熱くて入ることができませんね。これと同じ原理。蒸気があると、熱が伝わりやすいので、短時間で食品の水分を逃すことなく、加熱ができるのです。焼き魚は短時間・高温で、魚臭さを揮発させ、ふくっらと焼き上げ、煮魚は煮崩れや身が締まるのを防いで、しっとりと煮上げます。子どもに食べさせたい魚料理をおいしく作ることができるのはうれしいことですね。もちろん、魚だけではなく、スチコンでは多彩な料理をおいしくつくることができます。

 

次に、スチコンのメリットの2つ目は、「栄養を逃がさない」こと。水溶性の栄養成分は、ゆでると湯に栄養素が流出してしまいますが、スチコンは蒸気による加熱なので栄養素を逃がすことなく、子どもたちの口に運ぶことができます。そして、野菜に含まれる甘味やうま味も凝縮。おいしさにもつながっています。

 

そして3つ目のメリットは、「調理のしやすさ」。これは、給食のアピールポイントにはならなさそうですが、実際には調理がしやすいことで、食材数を増やしたり、料理のレパートリーを増やすことができます。調理担当者にとっては、大きな失敗が少なく、調理時間が読め、計画的な調理、作業の効率化がはかれるので、離乳食やアレルギー対応への余裕が生まれる等のメリットがあります。これも安全・安心・おいしい給食づくりにつながります。

 

 

■スチコン調理のポイント

 

スチコンメーカーのホームページを見ると、数多くのレシピが掲載されていますが、使いにくさを感じている方も多いようです。

  • モード・水蒸気量・風速量・時間の組み合わせが多すぎる
  • 保育園給食の分量に置き換えるのが難しい
  • 一鉄板で何人分作れるかわからない

 

その点、アドムのスチコン料理は、保育園向き。レシピは、全て給食専用で、モードと温度を固定し、一鉄板で作ることができる適量を示しています。

 

一番のポイントは、モードと温度を固定して4つに限定したところ。(スチームモード100℃・コンビ140℃・コンビ170℃・コンビ230℃)水蒸気量も、子どもの食べやすさに配慮して100%に固定しています。機種によって、温度を10℃前後変えて頂く必要がありますが、常に10℃上げる、下げると考えていただければ、ぶれることなく作ることができます。

スチームモード100℃
(水蒸気で加熱)

蒸し物は、この温度のみを使います。野菜を茹でるなどの下処理加熱から、蒸し物の本調理までできます。



コンビモード140℃+水蒸気量100%
(熱風と水蒸気で加熱)

かたい食材の煮物をじっくり煮る調理などに使います。140℃であれば表面の焼き色もほとんどつかず、じっくり長時間加熱する(弱火でコトコト煮る)場合に向いています。水分はほとんど蒸発しません。



コンビモード170℃+水蒸気量100%
(熱風と水蒸気で加熱)

炒める場合や高温で火を通すとかたくなってしまう食材に対して使用します。表面はほんのり焼き色がつく程度。中火から中強火あたりの煮物にも使用でき、長時間で水分は多少蒸発します。



コンビモード230℃+水蒸気量100%
(熱風と水蒸気で加熱)

肉や魚、豆腐など、短時間でこんがりと焼き上げる温度帯です。蓋や濡らしたクッキングペーパーで覆えば野菜の水分を活かした煮物にも使用できます。長時間になれば水分はかなり蒸発します。

・ホットエアーモードについては、従来のオーブンと同様に考えて、使用して良いでしょう。

■スチコン調理のコツ

 

「スチコン調理は誰でもいつでも同じ仕上がりになる」と思っている方も多いと思いますが、スチコン調理も、鍋料理と同様にちょっとしたコツで、さらにおいしくなります。

 

スチコン調理は、庫内を蒸気で充満させているため、「酢」が飛びにくく、鍋よりも酸っぱくなります。また酒も揮発しにくく風味が残り過ぎてしまうといったことがあります。このような調味分量については、アドムレシピでは既に調整済ですが、現場で必要なのが、食材に合わせた調整です。

 

季節によって、魚の脂肪分・水分量は異なり、野菜も水分量に違いがあります。同じように出来上がっているように見えても、少し魚臭さが残っていたり、野菜が固かったりすると、給食では残菜につながってしまいます。それを防ぐコツは、加熱時間を数分延ばすことです。

 

魚の場合は、数分、加熱時間を延ばすだけで、おいしさが格段に変わります。これに気づいたのは、実はここ1年ぐらい。中心温度が上がっていたらOK。ではなく、おいしさを確認することが大切だということがわかりました。特に、焼き魚や、衣をつけて油を回す「揚げもの風」の調理では効果抜群です。2分程度の延長で、魚の個体差をカバーできます。

 

野菜の場合は、季節による差が大きいのが、キャベツ、たまねぎ、だいこんです。野菜のやわらかくなり方を見て、加熱時間を延ばすことも必要です。

 

また、料理としては、170℃のコンビモードで最終加熱した結果、野菜から水分が出過ぎて、「鍋だったらもう少し水分を飛ばせるのに!」といった出来上がりになることがあります。そんな時も、ひと混ぜした後で、再加熱すると納得できる仕上がりになります。

 

コツは、加熱時間を延ばすこと。数分の追加で配膳にも影響を与えずに調整できるので、是非お試しください。

 

■さいごに

 

子どもの食事研究所では、給食現場の限られた資源の中で、子どもたちにとって食べやすく・おいしく・しっかりと栄養が補給できるように、日々、試作を重ねながらレシピの改定を重ねています。

 

現場の先生方に代わって、いろいろな調理法の挑戦しながら、みなさんにより良いレシピと調理法を伝えていきたいと思っています。

 

アドムのスチコンレシピ  https://admcom.co.jp/cookstep/

わんぱくランチユーザーは、ログインをして、作り方をご覧いただくことができます。

 

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