2018年7月13日
内容 | 保育園給食における アレルギー対応 |
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講師 | 佐橋 祐佳里 |
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会場 | 東京都台東保健所 | ||
参加人数 | 主催 | 東京都台東保健所 |
7月13日、東京都台東区にある台東保健所主催の栄養士研修会で、「保育園給食におけるアレルギー対応」というテーマでお話しさせて頂きました。
講義の内容は、
- 食物アレルギーの最近の動向
- 保育所給食の現状と課題
- アレルギー対応給食のポイント
今回は、給食担当者対象だったので、給食のポイントとして、献立作成に焦点をあててお話ししました。
そして、セミナーの後半はグループワーク。現場のみなさんに知恵を出し合っていただき具体的な対応策と実践的な改善点を見つけていただくような時間を設けました。
■食物アレルギーの最近の動向
最初に、平成27年12月に施行された「アレルギー疾患対策基本法」をご紹介しました。
この法案は、アレルギー疾患を有するものが、アレルギー疾患に関する理解を深め、居住する地域に関わらず適切な医療を受け、成長の各段階や職場において周囲から適切な理解と必要な支援を得ることで、アレルギー疾患に罹患していない者と変わらない生活を送れるようにすることを目指しています。
セミナーでは、保育園給食に影響がある、医療を提供する体制の確保等について詳しくお話させていただきました。
昭和大学の今井先生の講演会で伺った話では、医師の指示で除去している子に対して、経口負荷試験をして調べたところ、陽性率はたったの29%。なんと、3分の2は食べることができたそうです。調味料については、症状が出る子はいなかったとのこと。現状は、こんなにも無意味な除去が多いのです。
国は整備を進めていますが、まだ各地に差があります。保育園では、正しい診断の基でアレルギー対応をすることがとても大切です。
この話に対して、参加者のみなさんは、大変驚いていらっしゃいました。
さらに、昔はあたりまえだったことが、今では間違ったことになっていることに関しても、驚いている方がたくさんいらっしゃいました。
最近のアレルギーの研究からわかったことは、
- 妊娠・授乳中に母親の予防的除去の効果がないこと。
- 離乳食を遅らせても、アレルギーの発症のリスクを下げることができないこと
- その反対に、早い時期に摂取することで、食物アレルギーの発症を抑える可能性があること等がわかっています。
その他、研究の結果をお伝えしながら、実際に保育園ではどのように対応すべきかについてお話ししました。
アレルギーについては、常に情報をアップデートしていく必要があることがわかっていただけたと思います、
■保育園の現状と課題
いまや、国民の30~50%が何らかのアレルギー疾患を持っています。
乳幼児の罹患率は、1歳だと10%、平均で5%、約90%の施設を持つアレルギー児が在籍し、20%の施設にエピペンを所持している子どもがいます。
今回は、厚生労働省の「保育所におけるアレルギー対応ガイド」を確認しながら、園の対応についてみなさんと考えました。
保育園では、ガイドラインにもあるように「除去を意識した献立作成」がとても重要です。
給食管理は、献立作成→発注→配膳→喫食と一方方向、上から下に流れています。
各段階でリスクを減らす努力が必要ですが、上流の献立は、下流のリスクに大きな影響を与えます。つまり、アレルギーの事故のリスク管理で一番重要なのは、出発点となる献立作成。献立の段階で、在籍する園児のアレルゲンをなるべく使わなければ、事故のリスクを減らすことができます。
セミナーでは、既に、3大アレルギーのひとつである、「卵・乳を料理に使用しない」という取り組みをしている愛知県津島市、北海道の千歳市の事例をお伝えし、みなさんに自園の給食について考えていただきました。
■献立作成について
子どもの食事研究所で作成している「食育計画書」を配布し、ご覧いただきました。
幼児期の食育で一番大切なのは、「食べる体験」。給食は「食べる教材」です。保育園では、野菜をもっと食べさせたい、薄味でおいしく食べて欲しい、しっかりよく噛んで食べて欲しい、アレルギーがあったとしても、制限なくみんなと一緒においしく食べてほしい!といったように、たくさんの願いと課題があります。
その思いを形にするのが、実際の給食の献立です。給食室で作る食育計画はとても大切なものであり、給食の設計書です。
セミナーでは、「食育のために、料理をデザインするが 私の仕事であり、みなさんの仕事であること。そして、みなさんが作る食育計画、献立作成によって、アレルギーがある子も、ない子も、一緒に美味しい給食を食べることができること」を、具体的な献立案を示して参加者に伝えました。
保育園における食物アレルギーのカギを握っているのは自分!!という意識を持っていただくことができたと思います。
その後、具体的な実践方法について、参加者のみなさんにグループで話し合っていただきました。
短い時間ではありましたが、参加者のみなさんは、他園の具体的な対応を聞くことができ、大変、参考になったようです。
- アレルゲンを使用しない日を決めている
- 反対に使用する日を決めて献立作成をしている
- 地域の業者さんに頼んでアレルゲンを含まないものを作ってもらっている
- 小麦の代わりに米粉、豆乳等を活用している
など・・。
■参加者の声
- アレルギーについて対応、対策がよくわかりました。
- 他の園の方はアレルギー対応をどのようにされているのかを知ることができ、参考になりました。
- とてもわかりやすく、聞きやすい講義でした。アレルギー事情の最先端のお話を聞けて良かったです。他園のお話を聞けたのも良かったです。
- 他の保育園での対応などの仕方など知ることができて良かった。
- 他園でのアレルギー対応について様々な事を聞く事ができ、とても参考になりました。
- とても参考になりました。普段あまり他園の状況を詳しく聞ける機会もないので色々な工夫や対応方法が聞けてグループワークは良い情報交換の場になりました。講義もわかりやすかった。食物アレルギーの現状も聞くことができて良かった。
- アレルギーの最近の動向や、献立作成について、色々な情報を聞かせていただけて、とても参考になりました。グループワークも他園での対応の仕方を伺えて、参考になりました。