2019年7月18日19日
内容 | 和給食シリーズ第3弾”出版記念 保育園給食セミナー |
||
講師 | 子どもの食事研究所 所長 佐橋ゆかり |
||
会場 | 東京ガス 「厨BO!SHIODOME」(汐留) | ||
参加人数 | 各日48名 | 主催 | 株式会社アドム 協力 コメットカトウ |
2019年7月18日、19日に東京都汐留の東京ガスで、乳幼児施設向けスチコン調理専門書「和給食3」の出版記念セミナーを開催しました。
今回のセミナーは、今年7月に出版した「和給食3」の料理を中心にご紹介するとともに、昨年出版した「和給食2」で質問が多かった「米粉の蒸しパン」のデモをご覧いただきました。そして、スチコンの加熱で空いた時間には、グループでディスカッション!盛りだくさんの内容でしたが、会場は終始、活気にあふれ、学びが多いセミナーになりました。
■「和給食」のコンセプト
- 食育の視点をもつ
- 卵・乳・小麦を使用しない
- おいしさを追求する
研究所が目指すのは、子どもの食育課題が考慮された、みんなで一緒に食べることができる、おいしい給食です。
1つ目の、食育の視点を持つという点については
- 季節ごとにいろいろな食材を体験する
- 日本の伝統的な食材・味を伝える
- しっかり、よく噛んで味わう
など、園の食育課題に向き合い、食材、料理の特性、子どもの発育過程を考慮しながら料理を作っています。
2つ目の、卵・乳・小麦粉を使用しない点については、
保育園では、この3大アレルゲンを使用しなければ除去対応の約8割がなくなるといわれています。除去が少なくなれば、保育士さんにゆとりが生まれて、子どもたちは穏やかな雰囲気の中で食事を味わうことができます。
みんなで一緒にたべることができる料理を増やすことは、事故のリスクを下げるだけでなく、全ての子どもに効果的な食育を行う保育環境を整えることにつながると考えています。
3つ目のおいしさについては
研究所では、保育園という限られた資源の中で、子どもたちに安全でおいしい給食を提供するために、現場のニーズに合った新しい調理技術の研究を行っています。特に現場で「蒸し・焼き」にしか使われていなかった“スチームコンベクションオーブン”に注目して、多様な料理のスチコン調理に挑戦しています。
研究所から出版した“和給食”の料理は、日々の研究の積み重ねから生まれものです。
- 和給食1 ・・食育目標に合わせた季節の献立
- 和給食2 ・・スチコンでつくる野菜のおやつ
- 和給食3 ・・「野菜・魚・大豆」というカテゴリーに分けた季節の献立
スチコンを活用した大量調理に特化した乳幼児向けレシピということで、好評いただいております。
■料理のデモンストレーションと試食
今回は、和給食3の中から、、、
大豆製品を使った料理として、
- 厚揚げのケチャップ煮
- おからハム
をご紹介しました。
試食の感想
- ・角切りに切った厚揚げが子どもに食べやすく、味がなじんでいておいしかった
- おからがしっかりとしたハムになっていて驚きました
- ハムがしっとりしていて、とてもおいしかった
野菜料理として、
- 子どもが苦手な青菜を使った「鶏肉とこまつなのクリームライス」
- 「さつまいもと人参のオレンジ煮」
をご紹介しました。
試食の感想
- クリームライスのこまつなが食べやすく、豆乳がまろやかでおいしかった
- あんなにたんくさんのこまつなが食べやすくでき上がっていて感動した
- オレンジ煮のにんじんが自然な甘味でおいしかった
魚を使った料理として、
- 「さば缶」を使った栄養たっぷりのお団子
をご紹介しました。
試食の感想
- さばの臭みがかぼちゃで緩和されていて食べやすかった
- ちょっとさば感が強いので、少し味噌を加えてみようと思う
- さば缶を使うという発想がなかったので、取り入れてみたい
- 既に園で人気のメニューだが、簡単に団子にするデモが見れてよかった
そして、和給食2の中からは、「和風蒸しパン(あずき)」をご紹介。今回は、米粉と小麦粉を使った蒸しパンを2種類、同時に作り、実際に食べて頂き、米粉の特性について、みなさんと共有しました。
米粉小麦粉の大きな違いはグルテンです。
小麦粉の蒸しパン
- フワッと膨らむ
- 手で割った時にもやわらかさを感じる
- しかし、口に入れたときに唾液と混ざると、キュッと団子状になる感じがある
米粉の蒸しパン
- 膨らんでいるが重たい感じ
- 手で割る時、かじりとる時には、弾力がある
- 唾液と混ざると、スーっと粉状になる感覚がある
お団子の原料になる米粉ですが、蒸しパンにすると全く違った食感、口どけです。
実は、消費者庁の誤嚥のリストには「ロールパン」が入っています。参加者の中にも、保育園でパンが原因で誤嚥に近い状態を経験した方みいらっしゃいました。今回は2種類の蒸しパンを、慎重に食べ比べて、粉と唾液の混じり具合を確かめました。
試食の感想
- 米粉の方が甘くておいしく感じた
- 米粉の蒸しパンの口どけの良さにおどろいた。
- 注目して食べて、米粉の甘さを実感できた。
- 自園でも人気にメニューだか、小麦粉との比較がとてもおもしろかった。
■グループディスカッション
「大豆製品」「野菜」「魚」をテーマに、子どもたちにおいしく食べてもらうために、保育園でどんな工夫をしているかについて、話し合って頂きました。
他園の実践に対して、大きくうなずく姿、楽しそうな笑い声、熱心に話し合う姿。各テーマ15分程度でしたが、みなさん前向きに取り組んでいらっしゃいました。
大豆については、子どもの食べ具合、具体的な料理、調理方法などの情報交換が活発に行われました。
- 大豆のミンチでドライカレー
- おからのナゲット
- 凍り豆腐かりんとう
- 揚げ大豆のカレー味
- 厚揚げのから揚げ
- 凍り豆腐の揚げ煮
など。
野菜については、園で行われている食育活動に話が広がり、盛り上がりました。
- 野菜に触れる活動
- 子どものクッキング
- 家庭の自慢料理の紹介
など。
魚については、食育活動と共に、冷凍魚のおいしい食べ方や、価格の問題などについても話し合われました。
- 魚の解体ショー
- 保育士への魚の食べ方指導
- 子どものへのサンマ丸ごと提供
など。
最後には、グループで話し合ったことを発表していただき、参加者全員で共有しました。
■さいごに
今回にデモは、調理をスチコンメーカーのコメットカトウさんにお願いしたこともあり、切り方や煮方が、普段の研究所の試作とは少し違い、出来上がりが幼児向けではない部分がありました。
しかし、それも勉強!いくら同じ出来上がりになると言われているスチコン調理でも、切り方、下処理が違えば微妙に出来上がりに差ができ、それが子どもにとっても食べやすさに響きます。
保育園の調理では、
- 子どもの成長過程に合わせて工夫ができるか
- 園の調理環境に合わせて工夫ができるか
- 園に納入される食材に合わせて調理ができるか
など、難しさがたくさんあることを改めて感じました。
今回のセミナーでは、デモを見て試食しただけでなく、他の園の方と一緒に試食し、工夫するポイントを見出したり、園の実践を具体的に聞くことができたりと、明日から活用できる知識を獲得できたと思います。
今後とも、研究所では、みなさんと一緒に保育園の課題に向き合いながら、レシピの開発をしていきたいと思います。そして、みなさんの声を頂く場として、また学び合う場として調理セミナーを続けていたきたいと思っています。
参加者の声
- たくさんのレシピが知れて、保育園のレパートリーが広がります。
- わかりやすいデモで、楽しく料理を学ぶことができました。
- スチコンで下処理から調理までできて感動!
- 米粉と小麦粉の蒸しパンの食べ比べ、厚揚げの食べ比べなど、新しい発見がたくさんあって勉強になった。
- 作ったことがあるメニューでも、コツがわかり、もっとおいしくできそうです。
- 米粉の特性がよくわかった。
- 参加者の交流でいろいろな園の調理の仕方、食育が知れてとてもよかった。
- 他の園の知恵が知れて、とってもよかった。
- 作り方見る、食べる、話すというセミナーがとても楽しかったです。
- 他の園の子どもたちの様子が聞けて、とても参考になった。
- テーマが決まっていて、具体的な話ができた。園の給食に活かしたいと思います。
- グループディスカッションで教えてもらったメニューも早速取り入れてみたい。